柔道金メダリスト、婚活はじめました!〜最後に選ぶのは、幼馴染?元カレ?それとも婚活?

加藤side

僕は原に背中を押されて、ゆいの元へと向かった。

道場を出ると、表にある水道場で、ゆいが柔道着を洗っていた。

僕は、ゆいに真実を伝えよう。

そう思い、彼女に声をかけようとした。

その時だった。

「池田さん。」

彼女に話しかける。見たことのない男。

「え?斉藤さん?どうしたんですか?」

「みなみさんに聴いたら、ここに来たら池田さんに会えるって。だから僕来ちゃいました。池田さんに会いたくて。」

どうやら、こないだの合コンで知り合った人らしい。

僕は気になり、2人の会話をこっそりと聞いていた。

「え?どうして?」

「池田さんのことが好きだからです。」

え?

あまりの衝撃に声が出そうになった。

自分の口元を必死に押さえた。

「え?私ですか?」

男は頷く。

「私、良く食べるし、男っぽいし、柔道してるんですよ。」

「関係ありません。私は、そんなあなたのことを好きになったんです。」

ゆいは照れ臭そうにしていた。

「テレビに出られてるのを拝見しました。池田さんは、オリンピックに32歳で初出場されたって。長い間夢の舞台に立つために努力を惜しまずされてきたって。それを見て、僕感動しました。こんな素敵な方とお付き合いしたいって。そう思ったんです。」

男は、結の全てを知った上で結にアプローチしているのだ。

僕に入る隙間なんてない。

「池田さん!」

「はい。」

「良かったら僕と付き合ってください。」

彼は結の前に手を差し伸べた。

ゆいは、頷き、彼の手を握り返した。

「ほ、本当ですか?」

「はい。よろしくお願いします。」

そう言って、男がゆいを抱き寄せた。

カシャ。

一瞬何かが光ったような気がした。

だがこの時の僕は、そんなことよりも、大事なことがあった。

僕は完全に出遅れたのだ。

もう手遅れなのだ。

僕たちの恋愛は、もう過去で、過去に起きた事は、もう取り返しがつかないことなのだ。

それを悟ったのだった。

僕はこの場から立ち去った。
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