マフィアの弾丸 II





 (……疲れて、帰ってきた。のに、話し、母さんにも聞いてもらいたい。のに)



 その時間ですら
 祖父母と暮らしていると削がれてしまうことが多い。




 もう、いい加減にしてほしい祖母には。────…なんて。


 そう、怒りに(まみ)れるのは勝手と、

 ひとは言うのだろうか?



 他所から見たら、それは所詮、他人事で。

 80歳のおばあさんの日常の、我儘ぐらい。ときっと、匙を投げれば良いだけのことなんだ。




 ・・・・けど、現実にはそうはいかない。



 小さな積み重ねで、
 これまでも毎日、毎日、居候になってしまってからも、たくさん…、たくさん。


 いろいろと押し込められてきた、
 我慢してきた。

 どんな酷い言われようをされても献身的に支えるしかなく。



 …それでなくとも、子どもの私から見てもわかるぐらい、
 祖父母が可愛がっていたのは母ではなく
 母の弟で。

 そして、その弟家族だということも。




 (……知ってる。けど、)




 はぁ、と重苦しいため息を口の端からこぼし、肩を落として靴を投げやりに脱ぐ。

 そんな私にかえってきたのは、
 …チャリンちゃりん。と鈴を鳴らして2階から出迎えてくれた、我が家の愛猫ちゃんぐらいで。


 「にゃあァ〜」と愛らしく鳴きながらすり寄ってきた姿には咄嗟に、硬い表情も綻び。

 きれいな毛並みを撫でつつ、わずかにも引き締めていた口許はゆるむというもの。


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