マフィアの弾丸 II
策動の裏で…。
§
────…「カーフェイッ」
────…数時刻前。
寒々しく。
冬の大気が外気温を凍結させていくなか、某ホテルまえの道路際で密着するのは、ふたつの影。
数台の外車や、黒服のSPらしき男性たちに囲われても尚、
気にする様子もなく
その女性は、大胆にもカーフェイの首に
腕を回していた。
すこし柑子色のまじった、しとやかな長髪は寒気といっしょに、優美に靡き。
そして
己に抱きついてきた女性を、彼は難なく受け止めている状態である。
常通りウエストに、それこそ慣れたような所作で腕をまわし細い肢体を、
"あくまで"支える。
はたから見れば、恋人同士の逢瀬のようだが。
誰ひとりとして邪魔することのかなわない、そんな空間がまるで、
ドラマのごとく出来上がっていた。