マフィアの弾丸 II
「伊万里、なんかあった?」
「…何もないけど」
「ほんとうに何もない時は「何もない」とは言わないけどね、あんたは」
「…いや、何もない。と言うか、……」
「おじいちゃんおばあちゃんのことなら気にしなくていいからね。母さんのことも。
あんたはいつも黙って、
ほんとにしんどい時は
口にも出さなくなってくるから。
ちゃんと話せる相手に、愚痴でもなんでも
吐き出して言い合いなさいよ」
────もちろん、母さんも聴くから、できる限り。…って言いつつ
つい、おじいちゃんおばあちゃんのことで
イライラしちゃって、
伊万里に気を遣わせちゃうかもだけど。
・・・・・・なんて仕方なさげな微笑を携えながら、カラッと笑った母さん。
そんな母さんに、私も口端だけは上げてみせたけれども。
果たしてうまく、笑えていたのかは定かじゃない。
きっと、よっぽど暗い面持ちになっていたんだろう。
母さんの、再三「…伊万里?」と呼びかけてくる言葉にすら、何かしらの表情もつくれない。
「────…母さん、さ」
「うん?」
「……大人になる、強くなる
って、どういう事だとおもう?」