マフィアの弾丸 II
・・・・・とは言えいまさら、帰れない。というのが非情な実情というもので。
ここまで来て、
バスにも乗り込んじゃったけど一回、バックれる?
それとも『風邪気味』だとか、『体調不良』を言い訳にもう一度
連絡をとる、とか?
────…否さすがに。
そんな、失礼で胡散臭さを仕掛けるほど神経は図太くない。
ふるふると首を振り、脳内での
ひとり問答・押し問答をただ無意味にやり過ごしていたら、
気づけばバスは終点の駅前に到着していて。
そして無情にも。
車窓の外の"ソレ"を捉えると、もう、逃げることもできないのだと安易に、思い知らされる。
チラ、────と走らせた視線。
あからさまにバスの停車スペースだというのに堂々、4台ほどの高級車が駐車され、バスのゆく道を邪魔している様が窺える。
さらに言えば
後部席を降りて車体に背を預け、腕を組み優雅に佇む、
ひとりの女性が。
サングラスを掛けた面差しで
こちら側をジ、と待ち構えていたのである。