マフィアの弾丸 II
関係性の明確な名称もない私が、彼女に対して羨望をいだくだなんて僭上の沙汰、…とんだ赤っ恥もいいとこ。
悴んできた赤い指先たちを、擦りあわせながら暖をとるも
自分のこころの狭さが癪に障るばかりでなんの、解決にもならない。
・・・・・いっそのこと、最初っから剛腹な性格だったら、
こんな事ほどで動揺を煽られるのもなかったのだろうに。
────…なんて独白を、脳裏で漫然と流しつつ
ふたたび、視界にとり入れた目先のふたりの動向は、どうやらようやく、互いにその腕の力を緩め。
彼女が興奮冷めやらぬ感じにカーフェイさんを見詰めあげると、確認するように、彼の頬に親しげに触れている様子がうかがい知れた。
「────ぁ、…ぁ……ぅ。────はさつ……とおも…────」
「────あぁ、…かく……だから────た。…だろ?」
・・・・・なに、話してるん、だろ。
この距離からじゃ、わかんない、・・・・・な。
当然か。
盗み見してる時点でおかしい、もの。
もう────…帰るべき、だよ。
必死にそんな理性を頭にくりかえし、平静であることに努めようと
ひとつ、先の光景をなんとか、飲み下すように受け流そうとしていれば。
いまだ麗しく。
歓喜の表情でカーフェイさんを見詰めあげていた彼女が、クスッと艶美な微笑を口許につくると、
────…一瞬、
そう、"ソレ"はほんの一瞬の間の出来事だった。