マフィアの弾丸 II





 ・・・・・嗚呼そうだ。

 無い、のだ。関係は、これから先も、・・・今も。



 私自身が、自惚れた思考で、自分はあのひとたちの特別だ。などと誤認してそんな己の浅ましさもわかってるから、明確な一線を越える術の勇気も放棄したのに────…、










 ────ざわざわ、
 ザワリ。




 そんなとき、
 ────不意に。"それ"は、訪れた。



 妙なざわめき、…ちがうコレは。

 色めき?


 こちらを向いていた数多の視線たち一向が、大ホールの扉口に向けられ口々に、「()の方々よ」「ウォン総代表じゃないか!」と声高らかに、(へつら)いの響きが拡張していく。




 「……っぇ、」



 ・・・・・ま・ずい。


 咄嗟に。

 無意識に。後ずさってしまった。



 無論、両サイドにいる黒服のひとに誘導され逃げる態勢も無意味に、立ち去れなかったんだけれども。




 ────「嗚呼、いつ謁見しても極上のお方」

 ────「今宵はいつになく輝かしい」


 ────「あの若さで表社会の金融機関を掌握されていらっしゃると聞くぞ。大層、
 ご立派なご子息なんだろうなぁ」


 ────「おお、そう言えば。
 財閥界を仕切っておられる【執政官(しっせいかん)】の擁護下にあった、……ホレ。
 琉皇(るおう)一族とも。
 古くから親交があるって」

 ────「んあぁそれは(わし)も耳にしたことがあるぞ。
 日本ですら5トップに入る大財閥じゃからなぁ。
 そんなところ以上の頂点に君臨する
 ウォン家の次男たぁ、
 そらぁ優秀に、手塩にかけて育てられたんだろうさ。
 ヒッヒ。
 儂ら一介の
 成金とは規模が違うわい」


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