マフィアの弾丸 II
────「アーウェイ様、」
────「アーウェイ様だぞ、オイ!っ誰か。ご挨拶にっっ」
────「きゃっ、アーウェイ様だわっっ!
やだ、どうしようっメイク直しが」
────「カーフェイ様までご参列なさるとは。松泉寺財閥は
さぞ見込まれているんだろうなぁ」
────「ほんに。松泉寺一家はこれからも
安泰じゃな」
ざわりざわり。
ひそひそ、きゃあきゃあ。
パーティー会場と言えどもやはり、ひそやかな感嘆は隠しきれぬもの。
各々、お嬢様方やご婦人、紳士や財閥家の子息らしいきっちり、正装を着こなした
身分高そうな20〜30代ぐらいの若い、男性たちまで。
押し黙っていても、耳に突き刺さってくる、羨望と期待の、人々の声調には。
複雑さといっしょに、休まっていたこころを抉るのには十分な、言葉の棘たちだった。
船岡さんの後ろに、身を潜め息を潜め。
その久しい姿たちを、ただ呆然と。
目に、焼き付けていく。
(……、綺麗。だな)
若干、不機嫌さも如実に、キリッとした柳眉が片ほうだけ吊り
上がっているけれども。
相も変わらずその玲瓏たる美の表情は、無だ。
その面差しからは彼の心情は、押しはかることも叶わない。
普段、お昼刻に会うスーツ姿とはまたちがった、正装のスーツ姿で。
今日も、スキンヘッドのSP数十人を従えて颯爽と、ホール会場に入場していってしまったカーフェイさん。
その傍らには、
いつものシルバーブルーの彼が、咥え煙草をしたまま何やら、
タブレット端末に視線を遣りつつ
会場入りしていって。