マフィアの弾丸 II
不本意でありながらも不言実行する術しか見当たらず。
そのまま会場入りするためなのだろう、つらり。
ハズされた視線に、ホッ、とひそかに安堵の息を、洩らして歩みをすすめた。
・・・・・『竹倉』と呼ばれていた彼女の、侍従からの冷酷的な、眼差し。
(………落ち着、かない…)
アレは、部外者に対して向ける顔だった。
外面と同じ。
いまは船岡さんの前方に移動し、先陣を切って扉口まで誘導しているけれどその面からも、正直、私を連れ添っていくことを『善し』としていないのだろう事が窺える。
そして、中央を突っ切る彼女とそれについて歩く、私に対する好奇の視線や心ない声はいまだに、健在。
あの人たちが会場入りして、すぐにはホール内に行かなかったところを見るあたり。
・・・・・やはり、
それほどまでにしっかり、礼儀は弁えているという予測もつく。
うっとりと惚けてホールの扉口を眺め不動になっている聴衆が、大勢。
なのに、船岡さんは堂々と背筋を伸ばし。
黒服のSPと側近の彼を伴って割れた人垣の間を、中央突破していく。
(…………〜っハァ、)
ちいさく、細く、口端から溜まる吐息を外の空気となじませて。
なるべく、浴びる数多の視線たちに焦点を合わせぬよう顎を引き気味に、私は彼女の後ろにつき、
大がかりな扉を、こころを低くして
潜っていった。