マフィアの弾丸 II
圧をかけにきているような忠告に、自然と目は泳ぎ、募ってく恐怖心からか下唇まで噛んでしまう。
けれども反駁するには語彙力も、度胸だってもち合わせていない己の弱点を自覚してるからか。
大人しく首肯する他、術はない私を見て、
気を良くしたらしい船岡さんは。
「わかってくれたようで嬉しいわ」と、豊麗につくりあげた女神のような微笑みで
そう口にする。
そうして
すこし損なっていた機嫌を持ちなおすと
私の手をひき、
優雅に誘いはじめた。
「さぁ、彼の方々にご挨拶に伺いましょう。
貴女は話せない秘書として。
わたくしは、船岡ホールディングスの代表として。
父上に無理言って、
今回だけは特別に参列させてもらったのよ」
そんなふうににこやかに言の葉を紡ぐ彼女は、些か実年齢よりも
子どもっぽく映って。
「あぁ、竹倉たちはここで待っていてちょうだい」
「御意」
「畏まりましたお嬢様」
後ろをふりかえり、側近の男や周りをかこむSPの数人にはその場で待機するよう、
指示をだした彼女は。
各々、深く低頭する彼らにいちど、頷くと
今度は私にも視線を流し、
「────だから、ご無礼のないようにね」そう、釘を刺すことだけは忘れずに。
えっ。とこちらの理解が追いつく暇もなくつよく、引かれた右腕に心底、目を見張った。
い、いや・・・・・ま、待っ、て・・・。
まだ私だって、持ち直す準備ができて、無い・・・・、
こちらの動揺などいざ知らず。
彼女に腕を引かれるがまま、大衆の注目や人垣を割り入るようにして引っ張られるごとに
どんどん近づいてく、
あの人たちとの、距離に。
気付けば────…、
"彼ら"のまえに、
連れ出されていた────…