マフィアの弾丸 II





 ────…久しぶりの昔馴染みに逢いに、約数ヶ月まえ、
 帰国した。




 日本にいる間は、ダディーから「アルバイトを経験してみなさい」と言い付かり、

 日中は某ホテルの裏方の仕事をはじめるようになって、ようやく、滞在のリズムに慣れてきた頃合い。



 あたしは総無視、既読スルーが常の悪友ふたりに、懲りずに『会いたい』LINEを送りつづけて喚起するも、
 まったく、音沙汰無しときたもんだ。



 ならば…、と奥の手と銘打って近々、あたしの誕生祭が催される旨を口実に、

 バイト先まで迎えに寄越すよう呼び出してみると案の定、送迎車といっしょに来てくれた。




 ・・・・・相変わらず、と
 言うべきかしら。




 パーティーだとか社交場とか。

 公に大掛かりに設けられる場が用意される、となると、律儀に、出席してくれるらしい。



 何しろ彼らのお父上から、そう、言付かっている、とかナンとか。



 そのかわりに、ほかは好きにしていいとのことで、(────カーフェイ曰く、『親父が
 お袋と隠居したい理由が強』と言うことらしい)

 ────…以来、彼らも職務命令だけには忠実に、しかし私生活(プライベート)は各々、自由を提供されていた様子である。




 (……そう言えば、今夜は
 いらっしゃってくださらなかったな、元総代表)




 カーフェイたちの、お父上────基、ウォン・リュウフェイ元総代表は、


 ・・・・・・あたしの初恋。

 あたしの、恋い慕うひと。



 マフィアの総代表としても、表社会でも偉業を成し遂げられた秀抜(しゅうばつ)なお方で、今では滅多に、お目にかかれない。

 ご引退なさってからは、奥様とゆっくり過ごされている、とカーフェイたちから聞く。



 (………当然、ね。すでに、ひとのモノになっておられる方にいつまでも恋心を抱いていても、)


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