マフィアの弾丸 II





 芸能界屈指の、権力を握るといっても過言ではない、常盤(ときわ)さんと、
 いわゆる情報交換をしていた悪友ふたり。

 その顔だけを見れば
 そこらへんの国宝級の俳優やアイドル、
 モデルでは太刀打ちできない
 くらいには整いすぎた顔立ちをしているとおもうが。



 ・・・・・そう、瞭然(りょうぜん)、あの方────ウォン家の血筋なのだから、
 当然と言えば当然なのだけれど。



 ただ談笑とは言え、カーフェイもアっくんもニコリとも愛想は振り撒かないのに

 それでいて芸能界に、スカウトされまくるのだから、なんとも羨ましい始末である。



 そんな。

 ぴくり。とも動じた姿を見たことのない
 昔馴染みの彼ら。




 それ────…なのに、

 今日"初めて"、気配が大きく揺動したんだ。




 常ならば、どんな女性たちに迫られようと総無視か、もしくは
 アっくんが紳士の仮面をかぶって
 うまく、
 逃げ躱すのがセオリー通りというもの。


 カーフェイは基本、家族以外の人間という生きものには関心がなく。

 アっくんは性処理のためだけに、相手を選り好みしあとは、使い捨て。



 ただ、欲求を発散できる対象が在れば、オンナというそのモノには
 興味がない、
 そんな価値観。




 そしてあたしは、・・・・・"寂しさ"の温もり欲しさに、の利害一致で。




 だから、今回も。

 その構図ができあがると踏んで────…、


 その、
 ・・・・はずだった。




 最初に違和感を感じたのは、周囲の招待客たちの反応。


 あたしたちを、ねっとりとした視線で囲んでいた人垣がそぞろに、分散されていく気配を察知。

 そして間もなく、その人垣を縫うようにして現れた、ふたりの女性に、大衆の視線は集中していく。



 ・・・・・・否、ひとりは"彼女"に連れられて。という表現が正しいのか。



 彼女────確か・・・・、

 いま業績をあげていると聞く船岡ホールディングスの御息女、




 「……美希さん」



 その彼女の傍らには、これまでの社交会ではお見かけしなかった女性が一歩、ひかえるようにしてしすがに、佇んでいて。



 シンプルなブラックの
 ロングドレスに身をつつみ、

 奇抜な髪色のされたその女性の
 年齢は、あたしより・・・・すこし下?ぐらいかしら。


 心持ちどこか
 居づらそうに面差しを落とされていて。




 (………、どちらの、ご令嬢?)


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