玉響の一花 あなたにもう一度恋を 三
衷情(ちゅうじょう)
『おい‥‥早くしろよ。』
『分かってるって。次の一手で
決まるんだから慎重になってんだよ』
冷えたビールを片手に
アウトドアチェアに座り蓮見さんに
溜め息を漏らす亮さんが痺れを
切らして声をかけた。
『5秒前‥‥4‥3‥2』
『審判!分かったって!!』
2人のやりとりが面白くて
周りは呆れながらも笑っていると、
シャトルがようやく放たれラリーが
始まった。
風が気持ちがいい5月のGWに、
恒例の蓮見さんの別荘にいつもの
メンバーで来て、初日はこうして
芝生の広い庭に置き型のポータブル
ネットを配置してバトミントン対決を
ダブルスでしている
『わっ!!こだちゃんナイス!!』
『だって負けたらペナルティ絶対
嫌ですから!』
蓮見、古平ペア 対 筒井、井崎ペア
で試合を行い、現在18対19。
あと一点で勝負が決まる為、蓮見さん
達も私達も必死でシャトルを落とさぬよう打ち続けた。
『拓巳‥‥お疲れ様。』
筒井さんが柔らかく舞うシャトルを
思いっきり打ち込むと、蓮見さんが
追い付けず私達が勝った。
『あーーー悔しい!!』
筒井さんとハイタッチをしている
反対側で仰向けに寝転びジタバタと
駄々をこねている蓮見さんを無視して
古平さんと真っ白なタープテント下で
ミネラルウォーターを飲んだ。
上から見おろす筒井さんと
ギャーギャー喧嘩しているのにも
みんな見慣れてきたのかもう
誰も突っ込むこともしない
『はぁ‥‥楽しかった。
筒井さんは鍛えてるから分かるけど、
井崎さんも運動神経いいよね?
何かやってた?』
「中学の陸上と大学生の時のサークルで
よくみんなと体動かしてました。
バトミントンは今日初めてでしたが
こんなに楽しかったんですね。」
ルールとか全く分からないけど、
筒井さんにとりあえず相手側に落とせばいいと言われたから見よう見まね
だったけど。
グレーのTシャツの袖を捲り上げ、
そこから覗く程よく鍛えられた筋肉に
今更ながらだけど直視できない
「り、亮さんはされないんですか?」
『俺?走るのとかは好きだけど、
球技とかほんと下手だから、
ペア組みしたら即負けるから
リタイア。』
晩御飯の支度を賭けて戦ったから、
どちらが勝っても男性側は料理
苦手だから無理なんだけどね‥‥
なんなら亮さんが作った方が美味しい
と思うんだけど‥‥
「古平さん、私手伝いますから
安心してくださいね。」
『ありがとう、戦った意味ないけど、
頼むつもりだったから。』
『その方がいいよ。アイツら料理なんて
やりもしないのに賭けるものが
そもそも間違ってるから。』
休憩もせず、今度は一対一でまた
バトミントンを始めた2人に
古平さんと亮さんは呆れて別荘に
行ってしまった
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