玉響の一花 あなたにもう一度恋を 三

『少し寝れそうなら寝よう。
　俺も歯磨きしてくるよ。寒かったら
　もう一枚毛布が借りられるからな。』


「はい、ありがとうございます。」


何時間も座って過ごす予定だった私には
こんなラクな姿勢で寝ることなど予想
しておらず、テレビモニターの下に
足が真っ直ぐ伸ばせる仕様にまたまた
感動している


最早私の中ではすでにファーストクラス
といってもいいくらいに思えてしまう


朝ランニングしたことと、お酒を
飲んだ事で横になると意外にもすぐに
眠くなりウトウトしているうちに
気付いたら眠ってしまっていた



‥‥‥ん‥‥今‥何時だろう


手元のスマホをタップすると、
日本時間で朝の4時過ぎで、飛行機に
乗って10時間が既に過ぎていた。


確かフライト時間は13時間だったから
あと3時間ほどで着いてしまう。


あと一時間くらいはゆっくり寝ようと
もう一度目を瞑りウトウトしていると、
気づいた時には筒井さんに起こされた


『フッ‥‥おはよう。
　よく眠れたみたいだな。そろそろ
　起きて準備出来るか？』


「‥おはようございます。
　はい、大丈夫です。」


恥ずかしい‥‥。
緊張感なく爆睡してしまうなんて‥‥
筒井さんはちゃんと眠れたのかな‥



スキンケアと歯磨きだけ済ませると、
早めの朝食が6時前に運ばれ、また
2人で和食を選び美味しくいただくと
雲の上が少しずつ明るくなり、
幻想的な空の景色に感動していた


『空港に着いたら、そのまま一度
　フランス支社に行くぞ。
　ホテルのチェックインまで2時間は
　多分あるから、荷物を会社に置いて
　少しだけ買い物しよう。』


「はい、分かりました。」


こんなほぼスッピンで行っていい
ものなのかと焦ってしまう。
最低限のメイクをパパッと施すと、
あっという間に着陸時間になり
急に心臓がドクドクしてきた。



13時間なんて長いようであっという間だったな‥‥恥ずかしいくらい
寝てしまったけど、遂に来たんだ。
憧れのフランスに‥‥


大学に入って迷わず選んだフランス語。
世界遺産が多いこともあるけれど、
世界で30弱の国で通じる言語を
どうしても覚えたかったのだ。


カナダに行った時は、英語でほとんど
過ごせてしまったから、耳をすませば
聞こえてくるフランス語が間近に迫り
緊張感が増す


「筒井さん‥手が震えて‥‥
　今だけ握って貰えませんか？」