玉響の一花       あなたにもう一度恋を 三
飛行機を降りたら、仕事モードに
なってしまう‥‥
だから今だけは‥‥


『バカだな‥お前の手くらい、いつでも
 握ってやる‥‥‥ほら。』


筒井さん‥‥


本当は抱きしめて欲しい気持ちが
あったけど、優しく絡められた指に
不安だった気持ちが消えていく。


次ここに降り立つ時は1人だ。
この温もりを忘れないようにしたいな‥



「すごく広いですね‥‥」


荷物を無事に受け取り、ターミナルの
広場に来るとあまりの大きな規模に
ぐるりと見渡してしまう


『ここは最大級の空港だからな。
 鞄はコートの中に入れたな?』


「はい、大丈夫です。」


日本であまりカバンを隠す事は
ないけれど、やはりスリには
気をつけないといけないのは仕方の
ないことだ。


手荷物カートにスーツケースを
乗せて、手は筒井さんの腕に絡めるよう
言われたので、はぐれないように
着いて行った。


やっぱり筒井さんは慣れてるな‥‥
住んでたこともあるからか、安心感が
とても伝わる‥‥


空港内で小銭を作るために少しだけ
飲み物などを買った後、ターミナルから
出ると、筒井さんがキョロキョロ
し始めたので私も一緒になって
辺りを見渡した。



『滉一!ここだ!!』


えっ?


窓を開けて身を乗り出し手を振る相手に
私も思わず笑顔になってしまう


ガチャ


『2人とも久しぶりだな。
 元気だったか?』


『ああ、元輝も元気そうだな。
 迎えを頼んで悪かったな、時間的に
 助かったよ。』


「こんにちは元輝さん。
 お久しぶりです。」


相変わらず体格が良く体の大きい
元輝さんがサングラス越しにニカッと
笑うと、スーツケースをトランクに
軽々と積んでくれた。


『チェックインまで暇だろ?
 後でホテルまで送ってやるから、
 一旦このまま会社に行くぞ。』


『ああ、頼むよ、そのつもりだった。』


てっきり助手席に座るものだと
思っていたのに、一緒に後部座席に
座ってくれた筒井さんに安心しつつも
元輝さんが来てくれたことに、かなり
ホッとした。


今は筒井さんがいるけれど、1人だと
荷物を抱えて電車かバスになる。
海外のタクシーはなんとなく不安だし
色々下調べしてこないとな‥‥


フランスはお昼を過ぎたくらいで、
自分の中では次の日の朝なのに、
前日の午後という感覚に早くも
時差を感じている。


『井崎さん、緊張してるでしょ?』


ドキッ
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