玉響の一花       あなたにもう一度恋を 三

「えっ!?な‥‥なんですか!?
 ここってホテルですよね?」


予想していた部屋の中にベッドとテーブルがあるかな?とか思っていた私は、
あまりの広さに信じられず口が
開いたまま塞がらない


へ、部屋の中に階段がある‥‥
しかもキッチンや、これって
乾燥機付きの洗濯機とか?


「筒井さん!私1人でこんな広いところ
 使えません!!」


『フッ‥‥誰が1人と言った?』


「えっ?」


筒井さんも荷物を中に入れると、
私のそばまで来て、オデコをピンっと
弾いてきた


『コンドミニアムホテルだから、
 料理も出来るし、洗濯も可能だ。
 5日間掃除は入らないからタオル
 とかも洗濯しないといけないが、
 その方がリラックスできるだろ?
 ほら‥‥おいで。』


手を繋がれ、部屋の探索を一緒に
始めると、バスルームもユニットだけど
とても広いし、居間となるスペースにも
ふかふかのソファやダイニングテーブル
も兼ね備えていて、まるで家のようだ


2階に登ると、広々とした
スペースにまたソファとテーブルがあり
左右それぞれに寝室が付いていた。



「筒井さんはホテルのこと
 知ってたんですか?」


てっきり仕事で来てるから、
部屋なんて別々なのが当たり前だと
思っていたのに、素敵なホテルで
驚いてしまう


『スイスの方も同じみたいだぞ。
 だから、ペアが違ったらそれはそれで
 5日間心配だったがな。』


そっか‥‥
私は偶々筒井さんとフランスになった
けれど、スイスチームの誰かとペア
だったら5日間同じ空間で過ごす
ことになっていたかもしれない



「どうしよう‥‥仕事って分かって
 いても、一緒にいられて嬉しいなんて
 ‥‥叱られてしまいますね。」



2階の手すり部分から外を眺める
私を後ろから抱き締める腕が温か過ぎて
涙が出そうになる


こんなに居心地のいい場所を
知ってしまったから、短い時間とはいえ
寂しくて堪らない。


チャンスなのに、本当にそれでいいのか
と思えるほどに。


『今日は疲れただろう?
 後で外でご飯を食べてから
 スーパーで買い物してこよう。
 明日と明後日はバタバタだからな。
 仕事が終わったらいつも通りオフだ。
 だから安心しろ。』


後ろから筒井さんの手が私の顎を
捉えると、そこに優しいキスを落とし、
涙ぐむ私を抱きしめてくれた。



寝室は、一部屋はツインで、もう一つは
クィーンサイズのベッドがあり、
夜だけは一緒に眠りたいと決めて、
一部屋のみを使うことにしたのだ
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