玉響の一花       あなたにもう一度恋を 三
明日と明後日は、首から話せる言語の
カードをぶら下げ、パーティーに来た
招待客の誘導や、会場の手伝いなど、
スタッフとしての仕事がかなりある。


楽しみたいけれど、失敗しないように、
しっかりと仕事をこなしたいな‥‥
そしてフランス語も沢山学びたい。




『‥‥眠れないのか?』


「あ‥‥なんか緊張してしまって。
 大丈夫です。」


朝早いから寝ないといけないのに、
これでは次の日の遠足が楽しみで
眠れない子供と同じだ


隣には筒井さんが居て1人じゃない
のに、ベッドも環境も違うのもあり
ソワソワしてしまう


『フッ‥‥お前の大丈夫は
 大丈夫じゃないだろ?
 ほら‥‥寒いからここにおいで。』


筒井さん‥‥‥



エアコンで温かくしてある室内に、
フロントで借りられた毛布をかけて
いるものの、ホテルのシーツのような
掛け布団といえない薄さのものには
やっぱり慣れない


腕の中に入れてくれるように私を
そこへ閉じ込めると、温かくて
ホッとする。



『大丈夫だ。弊社のチョコレートと
 料理、お酒を美味しく食べてもらい
 ながらお祝いと共に来られる
 ゲストをもてなし、喜んで頂く
 気持ちを忘れるな。あとは‥‥
 とにかく楽しめばいい。』


背中をさする手が心地よくて、
腕の中で頷くと、何故かソワソワして
上を見上げた。


『どうした?』


「‥‥‥今は‥オフだから‥‥
 その‥‥キスしたらいけませんか?」


いつも寝る前に軽く触れるだけの
キスをしてくれていたけれど、
日本に帰ったらまたして貰えるのに、
何故か触れたくて仕方なかった


自分からこんな事を言うなんて
恥ずかしすぎるから、きっと顔が
赤いに違いない‥‥


モゾモゾと動き筒井さんの顎先に
唇を触れさせると、そのまままた
腕の中に潜り込もうとしたら顎を
捉えられてしまった


『お前は‥‥‥我慢してるのに
 無自覚だから困ったものだな。』


えっ?


顎をクイっと下に指で押されると、
筒井さんが舌を出したのを見て、
私はそのままそれを受け入れた。


「ンッ‥」


息が苦しくなるほどのキスを終えた後、
意識がぼーっとする私の鎖骨辺りを
強く吸われると、また私を抱き締め
ルームライトを消した。



『おやすみ‥‥いい子。』


いい子って言ってもらうのが、最初は
すごく嫌だった。


大人っぽくて落ち着いた筒井さんから
したら、5歳も歳下の私なんて、きっと
目にも映らない。


それでもこの人の知らない顔をもっと
知りたい‥‥って2度目の恋をして、
この腕の中に居られる当たり前の
生活の中で、悲しいこと、別れなど
沢山経験してきた
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