玉響の一花       あなたにもう一度恋を 三
私は恋愛経験が少ないから、恋愛が
こうっていうお手本になるものがなく、
ただ真っ直ぐに筒井さんを想うことしか
出来ないけれど、愛情を与えて一緒に
共感して過ごしてくれるナチュラルな
姿勢に、今だに恋をしてしまっている



初めて降り立ったフランスで、迎えた
朝が、愛しい人の腕の中なんて
怖いことが一つもない。



さぁ‥‥いよいよ挑戦の時だ。


真っ黒のワンピースに同じく黒の
ドレスシューズを合わせ、プレゼントで
いただいたリングとネックレスを
着けていると、筒井さんがネックレスを
着けてくれ両肩をポンっと叩いた


うん‥‥気合いが入った。


筒井さんが綺麗だと言ってくれた
ワンピースは最早私の最強の戦闘服。


このワンピースを着たことで、
胸を張って歩くことができたから、
今日も下を向きたくない


タキシードが似合い過ぎて、
直視できないほど素敵な筒井さんと
コートを羽織りホテルに鍵をかけると
パーティーが行われる会場にタクシーで
向かうことにした



フランスの11月は日本の冬とはやはり
比べ物にならないくらい寒いけど、
華やかな町並みがとても綺麗で、吐く
吐息の白さが邪魔なほど、ずっと
見ていられると思える


『滉一!!』


えっ?



午前中はパーティーの流れや仕事の
役割などの説明会が1時間ほど行われ、
午後からのパーティーに向けて、配置
などが行われる為、少しずつ人が
集まり始めていた会場に行くと、
こちらに走ってきた女性が筒井さんに
飛びついたのだ


『滉一!会いたかった!!』


『瑠以、辞めろ。』


『嫌よ!!フランスに居た時は毎日
 してたじゃない。』


えっ?


筒井さんの背後に立っていた私に
抱きついたままの彼女が視線を
向けると、ストンと降りて今度は
私を思い切り抱き締めた


『もしかして霞?
 滉一のガールフレンド?』


背は私よりも少し大きいけれど、
黒髪のパツッとしたボブが良く似合う
大和撫子のような美人からの抱擁に
どうしていいか分からない


『瑠以、困ってるから辞めろ‥‥。
 悪いな、大学からのツレで今は
 支社の広報課にいる。
 いいヤツだが、絡むと面倒でな。』


瑠以‥‥‥


あっ!!
色々あって忘れてたけど、亮さんが
言ってた人!?


てっきり男性だと思い込んでいたから、
こんなに綺麗な方で驚いてしまう


「井崎 霞です。
 初めまして。亮さんから伺って
 居たので、お会いできて嬉しいです」



『えっ!?亮!?今亮って言った!?』


ドキッ
< 125 / 138 >

この作品をシェア

pagetop