玉響の一花       あなたにもう一度恋を 三
亮さんの名前に思いっきりくいつく
彼女が、私の両方を持ってブンブン
揺らすと、筒井さんが流石に見かねた
私からベリっとまた剥がした


『亮が私のこと言ってたの?』


「えっ?あ、はい‥‥よろしくと」


どうしよう‥‥
絡みが面倒とか言ってたことは
絶対言えないけど、瑠以さんのことを
聞いたのは亮さんからで間違いないから
嘘はついてないはず


『そっかぁ‥‥やった‥嬉しい‥』


か、可愛い‥‥


顔を見るだけで、誰かが恋してるって
ちゃんと分かってしまう。
亮さんのこと大好きなんだって‥‥


『年明けから本社に来るんだろ?
 言いたいことは本人に伝えろ。
 コイツを巻き込むな。』


『はいはい。3年ぶりの日本だもの。
 きっと私のことなんてどうでも
 よくなってると思うけどね‥』


瑠以さん東京に戻ってくるんだ‥‥


私もいつから行くとかはまだ人事的な
事だから教えてもらってないけれど、
少しでも向こうで一緒に過ごせると
いいな‥‥


『そろそろ時間だ。
 広報課は向こうだろ。早く行け。』


『うん、井崎さん、フランス楽しんで
 過ごしてね。それじゃ。』


「はい!ありがとうございます!」


着物が似合いそうな彼女にお辞儀をすると、フランス支社、パーティー会場の
スタッフと段取り、流れなどを
話し合い、分からないところを筒井さん
に聞きながら準備の手伝いを始めた。


100名近くが入れる会場に、
お酒やチョコレート、料理が運ばれる
中、私は入り口で来賓されるゲストに
笑顔で挨拶をしながら帳簿にサインを
貰う係になった。



フランスでは、お酒を女性が注ぐことは
マナーとして良くないらしく、ホールは
男性が担当することになったのだ


『井崎さん、久しぶりだね。』


「伊野尾さ‥!あ‥副社長、お久しぶり
 です。この度は誠におめでとう
 ございます。」


黒のタキシードがよく似合う伊野尾
さんは髪の毛をカチッと固めて、
雰囲気が一段と素敵だ。


あの事件以来だから、同じ会社に
勤めていてもなかなか顔を合わせる
機会がなかったんだよね‥‥


『ありがとう。滉一もいるだろ?
 挨拶してくるよ。』


軽く手を挙げて会場の中に入る副社長
を見送り、続々と来られるゲスト達を
笑顔で迎え1人ひとりにお辞儀をして
迎え入れた。



社長にも声をかけていただいて挨拶を
すると、向こうから歩いてきた人物が
私を見つけ早足で駆け寄ってきた



『kasumi !! 』
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