玉響の一花       あなたにもう一度恋を 三
少し薄暗いパーティー会場は、
お料理とチョコレートなどが並ぶ
テーブルが美しくライトアップされ、
シャンパンやワインを片手に
歓談されるゲストの方々の邪魔に
ならないように隅で待機することにした


筒井さん‥‥どこだろう‥‥


誤解とはいえ、仕事中にジョシュ様と
ゲストの皆様の前であんなことを
してしまったことを謝りたい


海外支社の方々や、企業に携わる
滅多に関わらない人と接する
チャンスなのに‥‥



フロアを周りながら、チョコレートの
説明をしたり、パウダールームや、
テラスへのご案内をしたりと忙しく、
結局筒井さんと関わることが
出来ないまま1日目が終わった。


『Demain, les journalistes et les médias
Annonce et cérémonie d'un nouveau produit à venir
sera effectué, le flux sera donc
Assurez-vous de garder cela à l’esprit.』
(明日は、記者やメディアも
来られる新作発表と、式典
が行われるから、流れを
しっかり頭に入れておくように。)


前夜祭となる今日のパーティーとは
違い、明日は専属パティシエによる
新作チョコレートの発表とフランス1号店を出店した日でもある為の記念
パーティーだ


初めて日本で小さな1号店を出した日は、また別の日で来年が30周年。
フランスとスイスにはお店を出して
15年のお祝いもかねてのパーティー
となっている。



来年は社員旅行もかねて、日本で
大きなパーティーがあるのかな‥‥。
その時私はフランスにいたら
勿論参加できないと思う。
今を思いきり楽しまないと‥‥


『お疲れ様、タクシー待たせて
 あるから帰ろう。』


「あ、は、はい!」


注意されてから筒井さんと話せず
じまいだったから、なんとなく
体が強張ってしまいつつも、
先にタクシーに乗せてくれた優しさは
いつも通りで少しホッとした。


『食事をして帰ろう。』


「‥‥はい。あ、あの‥‥
 今日は勤務中にすみませんでした。」


タクシーの中で言うのも嫌だったけど、
一刻も早く謝りたかったのだ。


やましいことをしてはないけれど、
日本でジョシュ様と2人でエレベーターに乗った時のような態度でいるべき
だったのかもしれない‥‥


「本当に‥‥すみません‥」


『もう今は勤務時間外だ。
 反省してるなら明日挽回しろ、
 いいな?』


「ッ‥はい!‥痛っ!!」


おでこをピンっと指でハネられると、
少し近づいてきた筒井さんに思いっきり
鼻を摘まれた。
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