玉響の一花       あなたにもう一度恋を 三
フォーマルなタキシード姿の社長の
横で、紺色のベルベット素材の細身の
ワンピースを着こなす藍沢さんの美しさ
に惚れ惚れしてしまう


美しい人は何を着ても美しいとは
こういうことを言う気がする。


『勉強もいいが楽しんで過ごしなさい。
 いいね?』


「はい!ありがとうございます。」


『kasumi!! Pouvez-vous venir m'aider ?』
(霞、こっちに来て手伝って?)


「Oui, j'y vais tout de suite」
(はい、すぐに行きます。)


もう一度2人にお辞儀をした後、
テーブルクロスをかけるのに苦戦
していたスタッフの元に向かった。


昨日は初対面だったけど、2日目は
表情もお互いリラックスして、名前や
愛称で呼び合ったり出来ている


通訳としてここに来てはいるけれど、
こうして違う国の人と同じものを
作ったり出来る時間もとても楽しい


「わぁ‥美味しそう‥。
 S'agit-il de tous nouveaux chocolats ? Ça a l'air très beau et délicieux... Je veux le manger bientôt.」
(これは全部新作のチョコレート?
 とっても美しくて美味しそう‥。
 早く食べてみたいな。)


『オイシソウ?』


「ふふ‥ Jésus!オイシソウ!
 ça a l'air délicieux」


それを食べるようにジェスチャーで
摘んで口に入れモグモグした後、
頬を撫でていると、彼女が私を見て
笑ってくれた。


自社のチョコレートが本当に大好きで、
自分へのご褒美として何度も購入して
来た私にとって、久しぶりの新作達は
宝石のように輝いて見えるのだ



準備が終わり、受付に向かうと、
昨日とは違い、新聞社やメディアの
方々もたくさん見え、ゲスト以外にも
フランス支社の方々も見えていた。



『kasumi. Bonjour. Je suis heureux de vous revoir aujourd'hui.』
(霞、こんにちは。今日も君に会えて
 嬉しいよ。)



昨日の黒のタキシードとは違い、
クリーム色のデザインのあるタキシード
を着こなしたジョシュ様に丁寧に
お辞儀をした後笑顔を向けた。


『kasumi ?』


差し出された両手に小さく首を振ると、
他の方と同じように挨拶をした。
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