玉響の一花       あなたにもう一度恋を 三
「私、パリ市内で十分です。
 次来た時の為に、筒井さんのオススメ
 のお店を知りたいです。」


本当はモン・サン・ミシェルや
コルマールの旧市街など気になる場所は
あるけれど2日間しかないなら、
のんびり筒井さんと過ごしたかったのだ


『そうか‥‥それなら、2日間で
 行ける場所に沢山行こうか。』


「はい!」


電車の乗り方やバスの乗り方を
学びながら、シャンゼリゼ通りに続く
エトワール凱旋門やエッフェル塔を
巡りながらランチをしたり、マカロンや
チョコレートの専門店でお土産を
沢山買った。


サクレ.クール寺院があるモンマルトルの丘や、ルーブル美術館などにも足を
運び、夜はオペラ座にも連れて行って
貰えたのだ。


『疲れてないか?』


最終日の夕方、夕日が照らすパリの
セーヌ川の橋の上で美しい景色を
眺めていた私の肩をそっと抱き寄せて
髪に触れるだけのキスをしてくれた


「楽し過ぎて、筒井さんとのこの時間が
 終わるのが寂しくなってます。」


楽し過ぎたからこそ、次ここに来ても
筒井さんがいないという現実も
受け入れないといけない


寂しいけれど、自分で決めた事を
恐れずにやり遂げたい‥‥


自分には持てなかった自信が、
ここでどれくらい付くかは分からないし、きっと落ち込んだり泣く日だって
あると思う


それでも、待っていてくれる大切な
人の支えがある今、これ以上怖い
ことなんてないからこそ、今頑張る
べきだって感じる


「滉一さん」


『どうした?』


肩を抱くその手に触れ指を絡めると、
私の顔を覗き込んだ筒井さんに
自分からキスをした


「私‥‥今の時代に産まれて、
 滉一さんに出会えて、それだけで
 これ以上ない幸せな時間でした。」


泣いてはいけないのに、勝手に目から
流れる涙を筒井さんが丁寧に拭い、
目尻にキスをしてくれる


こんなに大人で素敵な人に
マスターの喫茶店で恋をして、
本当に色々あった。


諦めずに何度も同じ人に恋心を持ち、
その度にどんどん大切になり、
沢山のことを学びながらもそばで
過ごす事ができた。


「滉一さんが‥‥好きです。」


改めてちゃんと伝えた事がなかったと
思い、どうしても伝えたかった。
口にする事でまたあなたに恋をしていると心から思いたかったから。



『フッ‥‥俺も‥霞が好きだよ。
 お前に出会えて良かった。』
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