玉響の一花       あなたにもう一度恋を 三
私の隣に座った筒井さんが、私が
持っていたグラスを取り上げると、
香りをそっと嗅いだ。


「ふふ‥‥シャンパンですよ。
 これくらいなら酔いませんから。」


『今日は家まで送れないから、
 程々にしておけ。危ないから。』


みんなの前で頭を優しく撫でられ、
こういったスキンシップも久しぶりに
感じてしまい、恥ずかしさからお酒が
一気に体に回っていくように感じる



『はい、そこ!!
 来てすぐにイチャイチャしない!!
 そういうのは2人きりの時にしろ!』


『ハハッ!滉一のこんな姿が
 見れるなんて来日した甲斐が
 あったな。井崎さんこんばんは。
 改めました佐野 元輝です。』


「こんばんは。井崎 霞です。」


手を差し出されたので、立ち上がり
握手を交わそうとしたらその手を
引かれて手の甲にキスを落とされた



『元輝、ここは日本だしお前も日本人
 だからコイツを困らせるな‥‥。
 お前面白がってるだろ?』


『バレた?井崎さん気にしないで?
 ただの挨拶だし、俺奥さんいるから』


ほんとにラグビー選手のように
ガタイのいい元輝さんがゲラゲラ
笑うと亮さんとも久しぶりなのか
挨拶していた。



『Olivia, assieds-toi ici.』
(オリヴィア、ここに座って)


『merci. Tu es vraiment gentil.』
(ありがとう、あなたは優しいのね)


筒井さんが自分の隣の席の椅子を
引いてあげると、オリヴィアさんを
そこに座らせた。


気にしない気にしない‥‥‥
筒井さんは紳士として当たり前に
やっていることなのだから‥‥



『よし、俺らも飲もうぜ?
 スタートはビールでいいか?』


『ああ、オリヴィアも飲めるから
 拓巳に任せる。Puis-je boire de la bière ?』(ビールでいい?)


『Je voudrais du champagne.』
(シャンパンがいいわ。)


私が飲んでいたものを見てそういう
彼女に何故かドキッとしてしまった


『拓巳、彼女にシャンパンをグラスで。
 お前は軽めのにしておけ。』


「まだ大丈夫です。私もシャンパン
 飲みたいです。」


いつもなら言うことを聞くのに、
はいと返事をしなかった私を筒井さんが
じっと見ていたけど、グラスに入って
いたのを飲み干し俯いた


子供扱いされるのが嫌なわけじゃない。
心配してくれてるって分かるけど、
何故か素直に返事が出来なかったのだ
< 40 / 138 >

この作品をシェア

pagetop