玉響の一花       あなたにもう一度恋を 三
「私‥‥今の会社がとても好きです。
 自社のチョコレートも小さい頃から
 大好きです。グスッ‥‥‥
 でも‥この3年間、自分から何かを
 進んでやりたいって思えません
 でした‥‥せっかく筒井さんが
 受付に選んでくださったのに、
 本当にそれがやりたかったことか
 最近分からなくなったんです‥‥」


大きく深呼吸をして嗚咽を抑え込むと
筒井さんが私の手を握り、片手は
背中を優しくさすってくれる



「先日OB会に行った時に、当時
 一緒に外国語を習った仲間たちが
 それを活かした仕事をしていて、
 私だけ置いていかれてるような
 気持ちになり‥‥‥まだ‥‥
 受付としても未熟なのに、心の
 何処かでここにいていいのか?って
 悩むようになりました。」



『ん‥‥それでお前はどうしたい?』


涙を優しく拭いながら、真っ直ぐ私を
見つめる瞳に、瞬きをするとまた涙が
どっと溢れ出す


いつもは筒井さんが助言してくれ、
助けてくれたけど、今は私が言う
言葉を黙って待っててくれている


3年間甘えっぱなしで、成長するなんて
大きなことを言っておきながら、
助けてもらうことの方が多くて
自分1人では何も出来ていない



「‥‥私‥‥もう一度やりたいことを
 見つけたい‥‥。自分が心から
 選んだ事を自分らしく‥‥。
 ずっと入社から側で優しく
 見守ってくれていたのに‥‥
 だから‥‥怒っても‥いいですよ?」


何に対しても中途半端だけど、
今この気持ちを持つことが出来た
自分を偽りたくはない‥‥


『フッ‥‥‥前にも言っただろ?
 お前の人生はお前が決めるって‥。
 誰と過ごして何をするかは、
 俺が決めることじゃない。
 大切なのは霞‥‥お前の気持ちだ。』


「筒井さん‥‥」
 

私の大好きな顔が優しく笑うと、
張り詰めていた気持ちが緩み、
思いっきり抱きついた


「筒井さん‥‥‥うぅ‥筒井さ‥‥」


『そんなに呼ばなくてもここにいる。
 俺はお前の側を離れないから、
 ゆっくりやりたい事を探せ。
 悩んだら話を聞くから。』



もしかしたら、やりたいことが
見つかるのが明日かもしれない‥。
3年後かもしれない。
それでもいいの?



「グス‥‥わたし‥筒井さんと一緒に
 いたいです‥‥でもこのままの
 気持ちで同棲してしまったら、
 居心地の良さに甘えて、幸せすぎて
 ダメになってしまうので、
 私からこんな事をお願いするなんて
 厚かましいですが‥‥もう少しだけ
 待っていただけませんか?」
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