玉響の一花       あなたにもう一度恋を 三
のぼせそうになる私は先に浴槽から
上がると先ほどのことを考えていた


私は‥筒井さんにもっと我儘を
言ってもらいたいんだけどなって‥


大人で、落ち着いてて、私の考えなんて
いつもお見通しで甘やかしてくれる
人なだけに、素の筒井さんをもっと
曝け出して欲しい



ガチャ


ドキッ


ぼーっとしていたせいで、まだ体を
ふけていない状態で筒井さんが
お風呂から上がった来てしまい、
慌てて背を向けるとフッと笑われた


『お前、後ろは丸見えだぞ?』


「み、見ないでください!」


さっきまで体をあんなにも重ねて
いたし、お風呂だって一緒に入って
るけど、浴室は電気をいつも消して
貰ってるからいいとしても、ここは
明るいから恥ずかし過ぎてバスタオル
を背中から被った


『貸せ。拭いてやるから。』


「あっ!筒井さん、大丈夫ですって」


そんなことを言っても無駄って
分かってるのに、バスタオルを
奪われると、頭からワシャワシャと
豪快に拭かれてしまい、恥ずかしくて
ずっと俯いてしまう


籠からキャミソールと下着を取り
パパッと身につける頃には、筒井さんは
下着姿のみで暑いといいながら先に
リビングに行ってしまった


「はぁ‥‥」


これが毎日とは言わなくても普通に
ある日常になるのかな‥‥


腰と下腹部に残るダルさはいつもの
事ながら、体力がこれ以上低下しない
ようにしなきゃ。



『こっちにおいで。』


なんだろう‥‥と思いながらも、
筒井さんが待つリビングのソファに
向かい横に座ると、筒井さんが
私の方に向き直り私の両手をそれぞれ
包み込んだ


『拓巳のおかげで順番が変わって
 しまったけど、改めてちゃんと
 お前とここで始まる日に言いたかった
 事があるんだ。』


ドクン



整った綺麗な顔立ちの筒井さんに
私もソファの上で向き合うように
座り直すと握られた手をそっと
握り返した。


『俺が恋愛と言うものに対して
 冷めて生きてきたのに、お前を
 知って、真っ直ぐにぶつかってくる
 素直な姿勢に、戸惑いながらも
 忘れていた誰かを思う気持ちを
 思い出せた。
 お前には沢山感謝してる‥‥霞。』


筒井さん‥‥


フッと口元が少し緩んでから笑うと、
私もその笑顔に釣られてしまう


最初は喫茶店で見せてくれたこの顔に
心が動かされた。
それから好きになるのに時間がかから
ないほどに‥‥
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