玉響の一花       あなたにもう一度恋を 三
改めて人事って‥‥もしかして
海外のこと?


呼ばれることなんて滅多にないから、
絶対そうだとは思うけど、合否は
まだ分からないから、今はとにかく
落ち着こう‥‥


ソワソワして気にはなりつつも、
午後の業務も変わりなくこなして
来客応対していると、ジョシュが
社長と秘書に続いて一緒に
エレベーターから降りて来たので
立ち上がり頭を下げた。


「お疲れ様でございます。」


『井崎くん、お疲れ様。
 少し彼と出てくるから、急用が
 あれば秘書課の方に伝えて
 貰えるかい?』


「はい、かしこまりました。
 お気をつけて行ってらっしゃいませ。
 ‥‥ S'il te plaît, vas-y」


ジョシュ様にも同じように挨拶をすると
彼が近づいて来て、カウンターに
両肘をつき前のめりで近づいて来た


「Ce qui s'est passé?」
(どうされましたか?)


『Hé, est-ce que Kasumi a un petit ami ?』
(ねぇ、霞は恋人っているの?)


えっ!?


鼻筋が綺麗に通った美しい顔立ちで
真剣に聞いて来た内容に、秘書の方と
目が合ってしまった。


彼女はフランス語が話せるから、
彼がなんて言ったかきっと聞こえてる。


「Je suis au travail, donc je ne peux pas répondre à cette question. Excusez-moi, j'ai du travail à faire.」
(勤務中ですので、その質問には
 答え兼ねます。仕事がありますので
 すみません。)


社長の大切なお客様でありご友人なのは
分かるけど、どう伝えれば正解か
分からずにとりあえずそう答えた。


『Kasumi...je‥』
(霞‥僕は‥‥)


『ジョシュ、車を待たせてるから
 ご飯に行くよ。』


社長が入り口から彼に呼びかけると、
秘書の方がフランス語で話してくれ、
溜め息を吐いたジョシュ様は不満気に
去って行った。


ビックリした‥‥‥
まさかこんな会社の入り口で恋人の
有無を聞かれるなんて‥‥


佐藤さんが休憩中で良かった‥‥


筒井さんとのことは、迷惑かけたく
ない。仕事とオフをしっかり分けて
いらっしゃることは尊重したいので、
なるべく一社員として接していきたいと
思っている
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