忘れられるはずがない〜ドクターに恋して〜
いつのまにか朝が来ていたようだ。窓から入ってくる日差しに部屋の中を見渡すことができた。
石油ストーブがついている。その上にやかんが乗っていた。
彼の姿はない。物音も聞こえない何処かへ行っているのだろうか。救助を呼びに行ってるのかも。

ここは山小屋のようだった。売店?受付だろうか小さなレジが置いてある。
彼はキャンプ場だと言っていた。ここは管理棟みたいなものなんだろうか?棟というには小さなスペースしかないので管理小屋?と言った方がいいのかもしれない。ただ釣具やレンタル用品。木炭やランタンなど貸し出せるような物や販売しているらしいものが置いてあった。

葵はお腹が空いている事に気がついた。
昨日までは空腹などは感じていなかったのに今は感じる。身体はだるいし、あちこち痛いけど起き上がれそうだ。

のそりと動いて毛布をのけた。自分が裸だという事に気がついた。
もう気にならない。ゆっくろと窓へ近づくと、外の様子を確認した。

雪……眩しいと思ったら、一面雪に覆われている。
この時期にまだ雪が積もるんだ。あのまま外にいたら確実に死んでいただろう。そう考えると生きている事が奇蹟だ。
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