忘れられるはずがない〜ドクターに恋して〜

仕事復帰


葵がシンガポール行きを決めたのには大きな理由があった。

仕事に復帰してから、葵がなぜあの日、一人でホテルの商談に行ったのか。
その時の状況を会社に報告しなければならなかった。

葵は一人で行く予定ではなかった。3人で行く予定の出張であったことを報告する。そして先方のホテルにアポイントがちゃんと取れていなかったこと、追い返されたことなど、会長である祖父に話すこととなった。


事業部長の榊原は、バスの事故に巻き込まれ葵が帰らぬ人となったと思っていた。
当初榊原部長は『葵の独断であのホテルに一人で勝手に商談に行った。自分は止めたが、彼女が意見を聞かなかった』という報告をしていたようだった。

まさか生きて帰ってくると思っていなかったようだ。
その事が明るみになると、若い社員に対するパワハラが普段から行われていたこと、女子社員に対するセクハラそれに 産休や育休をとる女性社員に対してのマタハラ。
あらゆることが次から次へと。

コンプライアンスに厳しい世の中だ。守らなければいけない社員が、会社を信じられなくなることは避けなくてはならないと、榊原部長は厳しい処分を受けることになったのだった。

その筆頭、諸悪の根源、榊原は葵の直属の上司。

シンガポールへの出向。そいつが逆恨みして葵になにかをしてくるのではないか。今回のシンガポールの件は、心配した祖父の判断だった。


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