人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 官舎に帰ってくると、入口の掲示板の前に成田さんが立っていた。
 私たちに気がつくと、彼は振り向き「こんばんは」とにこやかに言った。

「デートですか? いいですね」

 勇朔さんが「ありがとうございます」と短く言ったから、私は隣で軽く会釈した。すると、なぜか成田さんは私に意味深に微笑んだ。
 この間のことを思い出し、頬が急に熱くなる。何かを言われる前にと、私は慌てて口を開いた。

「なにをされてるんですか?」

「ああ、これです」

 成田さんは、貼っていたらしいポスターを指さした。

「来月、第一音楽隊の定期演奏会があるので、その宣伝です」

 なるほど、成田さんは自衛隊の中でも音楽隊に所属していたのだと思い出す。

「おふたりも、よろしければ」

 成田さんがそう言うと、勇朔さんが口を開いた。

「俺は当日、師団長と共にうかがいます。どうぞよろしく」

「ああ、そうでしたね! じゃあ、芽郁さんはよろしければ、うちの家族とでも来てください」

「予定が合えば、ぜひ」

 私たちはそんな会話をしながら、部屋へと戻った。
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