人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています

2 新たな出会い

 桜の咲き始めた、三月下旬。私は成田さん一家と(といっても成田さんはいないのだが)電車に揺られていた。

 目的地は文京区。大きな舞台のあるホールへ向かっていた。今日は、陸上自衛隊第一音楽隊の定期演奏会の日だ。

 水族館デートの日から、一ヶ月が経つ。
 〝千歳さん〟は相変わらず見つかっていなかった。今となっては〝千歳さん〟であるかどうかもあやふやで、そんな状態で彼が見つかるのかもわからない状況だ。

 勇朔さんは八年前の土砂崩れのときに、あの現場へ派遣された自衛官をしらみ潰しに探してくれていた。
 しかし当時、勇朔さんはまだ大学生。当時の内情が分からない勇朔さんは、調べるのに困難を極めているらしい。
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