人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 やがて会場に着き、チケットを見せてロビーに入った。かなり大きなホールで、子どもたちにつられて私も「わあ」と声を漏らしてしまった。

 それから席に着き、演奏が始まるのを待つ。ソワソワしていると、琉人くんが「あ」と小さく声をもらした。

「芽郁さん、羽田一尉だよ」

 琉人くんが指さした方を見ると、なるほど勇朔さんが年配の、だけども威厳のあるオーラを放つ男性と共に、前の方の席へ腰掛けるのが見えた。

 初めて見る、勇朔さんの正装姿。
 陸上自衛官らしい威厳のある紫紺のジャケットには、右肩から胸にかけて白い飾り紐のようなものがついている。
 左胸についている様々な色の布は、自衛隊内での活動で功績を残した人に与えられる記念章だと知っている。その章たちをちらりと見て、勇朔さんの優秀さを改めて感じた。

「芽郁さんって、羽田一尉が大好きなんだね」

 愛入ちゃんに言われて、はっとする。顔のほてりを感じながら振り向くと、「ずっと見てたでしょ」と笑われてしまった。
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