人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 演奏会が始まった。演奏会は二部構成で、第一部はポップスを交えた楽しいショーステージだった。
 成田さんにはソロパートがあり、舞台の真ん中でサクソフォンを堂々と演奏していた。

 第一部が終わり休憩に入ると、私たちは水分補給のために一度ロビーに出た。

「パパ、すごかったなぁ」

 愛入ちゃんがそう言う。私は「そうだね」と返し、微笑んでいた春海さんの方を向いた。

「とっても楽しいステージでしたね。誘っていただき、本当にありがとうございます」

 春海さんに言うと、「楽しんでいただけて何よりです」と笑顔で返された。そんな話をしていると、不意に琉人くんが「ママ」と春海さんの袖を引っ張った。

「おトイレ行きたい」

「そうね、今のうちに行ったほうがいいわ。愛入は?」

「私は平気」

 愛入ちゃんは女子トイレの列を見て、ちょっとだけ嫌そうにそう言った。

「春海さん、私、愛入ちゃんといるので、琉人くんお手洗いに連れて行ってあげてください」

 私がそう言うと、春海さんは「じゃあお願いするわね」と小走りでトイレに走っていく琉人くんを追いかけていった。
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