人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「そういえばあなた、人を探してるって聞いたわ」

「そうなんです!」

 睦姫さんの問いに、思わず前のめりに答えてしまった。

 師団長の娘である睦姫さんの力を借りれば、〝千歳さん〟を見つける事が出来るのではないかと思ったのだ。

「昔、助けていただいた自衛官の方を探しているんです。千歳仁斗さんという――」

「ひどい人ね」

 睦姫さんは私の言葉を遮ってそう言った。思わず、「え?」と声を漏らす。

「あなた、人探しのために勇朔さんの恋心を利用しているんじゃないかって、駐屯地内ではもっぱらの噂よ」

「そんなこと――」

 ない、とは言えない。
 むしろ、そうだ。今でこそ、勇朔さんが好きだし、ちゃんと結婚したいと思っている。

 だけど、最初はそうじゃなかった。彼を利用しようとしたのは間違いない。
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