人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 黙ってしまうと、睦姫さんはこちらに笑みを向ける。まるで私を軽蔑するような、(いや)らしい笑みだ。

「あなた、知ってる? 副官って、ついた上官の仕事の補佐を全部やる仕事なの。仕事の調整やスケジューリング、会議の準備、それに出かけるときは付き人。それだけでも激務なのに、あなたはそれ以上のことを勇朔さんに頼んでいるのよ。彼の恋心を利用して」

 睦姫さんは微笑みながら、相変わらずこちらに厳しい視線を向ける。
 口元と目元のちぐはぐな表情は、心の奥底まで見抜かれそうで怖い。愛入ちゃんが、背後で私のジャケットの裾をキュッと握ったのが分かった。

「それに、あなたに一目惚れしてしまったせいで、勇朔さんはあなたと出会ったことで、夢を絶ったのよ。上にいくという、夢を」
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