人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「夢を、絶った……?」

 そんなこと、一度も聞いたことがない。
 思わず彼女の言葉を繰り返すと、睦姫さんは「とぼけるのがうまいのね」と私を鼻で笑った。

「私と婚約していれば、彼の出世は確実なものだったの。なのに、婚約直前にあなたに一目惚れするなんて。しかも、勇朔さんの恋心を利用するような、悪い女」

「あ……」

 全てが分かった。睦姫さんが私につっかかってくる理由も、勇朔さんが夢を絶ったと彼女が言う理由も。

 睦姫さんは、勇朔さんの婚約者だったんだ。しかも、師団長の娘である睦姫さんとの婚約。それを勇朔さんが受けていれば、彼はきっと出世していたのだろうと、内情を知らない私でも容易に見当がつく。
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