人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 それから、手近な紙に手紙を書いた。

 恋心につけこんで人探しを手伝わせてしまったことへの謝罪。これからはひとりで千歳さん探しを続けること。お世話になったお礼と、勇朔さんの出世を心から願っていることを記した。

 記しながら、涙があふれた。だけど、この涙は身勝手なものだからと必死にのみ込んだ。

 心配していた勇朔さんとの鉢合わせもすることなく、私は手紙をダイニングに残して部屋を出た。

 急いで官舎を出て、駅へ向かった。駅のホームから見える夜の駐屯地は、しんとしている。

 勇朔さんはここで、陸上自衛隊を導く立派な自衛官になる。私はそれを、遠くから応援できたらそれでいい。そう思って、やってきた電車に乗り込んだ。
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