人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 だけど、勇朔さんの未来を思えば思うほど、目頭が熱くなった。泣くまいと思えば思うほど、鼻の奥がつんとしてくる。

 じわんと視界がぼやけたら、それが最後。涙があふれてきてしまった。

 自業自得だ。彼の恋心につけこんで、人探しを手伝わせていた。そんな私が彼を「好き」だなんて、おこがましすぎる。それに、私のために夢を諦めさせるなんて――。

 私との出会いは、勇朔さんの人生を狂わせている。私は愛されていることにあぐらをかいて、甘えてしまっていたのだ。彼のことを考えたら、私はそばにいるべきじゃなかったのに。

『〝千歳〟が見つかった時にあなたが俺を好きになっていたら、お付き合いをしていただけませんか?』

 そんな約束を、彼の気持ちをよく考えずに受けてしまったあの日の自分を恨む。いくら好きだと言われたからといって、それを受けてしまったのは紛れもなく私自身なのだ。

 バカだなぁ。

 涙をため息に変えようと、何度も何度もそう頭の中で繰り返した。だけど、いっこうにため息には変わらず、涙ばかりがあふれてくる。
 こそこそと服の袖で涙を拭いながら、私は必死に勇朔さんへの恋心を忘れようと戦っていた。
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