人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 やがて、あの桜の木近くにバスが停まる。私がそこで降りると、優しい風に吹かれて、桜の花びらがはらはらと舞っているのが見えた。

 私は桜の木の方へ歩く。近くの街灯に照らされ、満開の桜の木は力強く、だけどその花びらを切なそうに散らしていた。

「うさまる……」

 桜の木の根元に歩み寄り、そこにしゃがんだ。もうそこの土はあの日のようには盛り上がっておらず、うさまるはきっと自然に還ったのだと思った。

 私は鞄からうさまるのプレートを取り出した。それから、あのぬいぐるみも。本物のうさまるよりは小さいが、本当によく似ている。

「千歳さんは、どこにいるんだろうね」

 あの日、うさまるを見つけてくれた、私を救ってくれた千歳さん。彼に一目会って、お礼を伝えられればいいと思っていた。
 それなのに、私は――。

 止まっていたはずの涙が、ほろほろと溢れ出した。

 これで良かったはずなのに。恋心は置いてきたはずなのに。
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