人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「どうして、ここに?」

 驚きで涙は引っ込み、代わりに疑問が口からこぼれた。

「駅から走ってきました。バスもタクシーもなかったので。それに――」

 勇朔さんはそこまで言うと、桜の木の根元にそっと目を向ける。

「ここは、俺にとっても大切な場所ですから」

「え……?」

 私の疑問に勇朔さんは優しく微笑んで、着ていたジャケットを脱ぐと、私の肩にかけてくれた。

「随分とぬれてしまったみたいですね。風邪を引いてはいけませんから、どうぞ」
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