人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「寒くはないですか?」

「私は平気です。でも、これじゃあ、勇朔さんが――」

「俺の心配は無用です。鍛えていますし、駅から走ってきたので体は温まっていますから」

 勇朔さんは言いながら、私の腰を抱く腕に力を込めた。それが同時に、きゅうっと私の胸を苦しめる。

「少しは温かいでしょうか?」

 口を開いたら涙があふれてしまいそうで、私はこくりと頷くことしかできなかった。それでも、勇朔さんは「新しい陸自の正服が防水仕様で良かった」と、安堵の息をつく。

 屋根にかかる雨音、湿った土の匂い。私は目元の熱が治まるまではと、黙っていた。

 そんな中、ちらっと見上げた勇朔さんは、真っ暗な雨の夜の中でも凛々しく、じっと前を見ていた。

「手紙を読みました」

 不意に、勇朔さんが口を開いた。

「演奏会の後、愛入ちゃんから睦姫さんに会った話も聞きました。だから、あなたの心情は大体は把握しているつもりです。俺の恋心から、あなたを振り回してしまったことを後悔しています。申し訳ない」

 勇朔さんはそう言うと、私に軽く頭を下げた。目があってしまいそうになり、私は慌てて視線を下に戻した。
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