人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 ということは。
 私の探していた人物は〝千歳さん〟ではなく、今、目の前にいる勇朔さんということ……?

「あの日、私にジャケットをかけてくれたのは、うさまるのお墓を作ってプレートにメッセージを書いてくれたのは、勇朔さんだったんですか?」

 見上げると、彼は眉をひそめて微笑んでいた。まるで、答えに困っているようだ。

「教えてくれませんか? あの日のこと」

 すると、勇朔さんは私に、「思い出すのは、あなたには辛くはないですか?」と訊いてくる。きっと、初めてのデートで動物園に出かけたとき、私が大泣きしてしまったことを気にしているのだろう。

「大丈夫です、もう泣きません」

 私は服の袖でごしごしと目元を拭うと、勇朔さんは一度優しく私に微笑んだ。それから、じっと桜の木の方を見つめ、ゆっくりと口を開いた。
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