人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 彼女はすぐに見つかった。

「こちらの民家に人は残っていないと情報があります。なので――」

 そう言う救助隊員に取り押さえられていたのだ。
 それでも彼女は必死に抵抗している。そんな彼女の制服は、土砂で泥だらけになっていた。

「うさまるがいるんです! うさまるは家族なんです!」

 なにかを懸命に叫び、泣き、訴える少女。なんとかして彼女を助けたいと思った。
 しかし今、彼女は、救助活動の邪魔をしている。とにかく、彼女を冷静にさせることが一番だろう。

「離してください!」

 まだ暴れ、叫ぶ彼女の近くに寄る。勇朔は大きく息を吸い、腹の底から声を出した。

「おい、いい加減にしろ」
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