人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 しかし、今はもう夜遅い。避難所には、消灯時間もある。
 だが、勇朔は明日の任務が終わったら〝予備自衛官補〟としての任を解かれてしまう。

 考えた末、勇朔は規制線の手前、大きな桜の木までうさまるを連れてきた。このあたりに、少女が分かるようにどうにかできることをしようと考えたのだ。

 すると、桜の木の向こう側に広がる墓地に、住職らしい人影を見つけた。作務衣姿の彼は、勇朔に気がつき体ごと勇朔の方を振り返る。それから、丁寧に頭を下げた。

「どうかなさいましたか、自衛隊の方」

 作務衣姿の彼はそう言うと、勇朔の手もとを見た。うさまるを包んだタオルを、両手に大切に持っていたからだ。

「こちらの土地の方ですか?」

 勇朔の問に、彼は「ええ」と優しく答える。

「先日の土砂災害を、このお墓は免れました。ですが、万一のことも考えて何度も見回りに来ているんです」

 勇朔は「そうでしたか」と答え、それから申し訳なさそうに口を開いた。

「このうさぎを、こちらに埋葬させていただいてもよろしいでしょうか?」
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