人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 勇朔が事情を話すと、彼は快諾してくれた。
 ありがたく思いながら、勇朔は桜の木の根元にうさまるを丁寧に埋葬した。それから、持っていたマーカーで少女へのメッセージを書き、盛り上がった土の上に置いた。

 これで、彼女が気づいてくれたら。
 そんな祈りを託し、どこかほっと安堵した気持ちで、即席のお墓の前で両手を合わせた。

 しかし、その後の現実は安堵できるようなものではなかった。

「どういうことですか?」

「だから、亡くなったんだよ。お前と俺が運んだ、じいさんとばあさん」

 翌朝、突然耳に入った訃報。勇朔と先輩が最初に避難所へ運んだ老夫婦が、避難所からほど近い崖で飛び降り、亡くなったという。

 普段はこんな話は耳に入らないらしいが、警察からの聴取があるということで、先に教えられたのだ。
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