人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 救った命は、救われてはいなかった。
 救えるはずの命を、絶たせてしまった。

 その事実は勇朔に、重くのしかかる。

『なにが大丈夫だ。俺たちには、なーんにも残っちゃいないよ』

 そう言った、年老いた男性の顔を思い出す。勇朔は、男性に告げてしまっていたのだ。『もう大丈夫です』と。

 有事の際に、人の役に立ちたいと志願した予備自衛官補。これでは、人を助けるどころか、追い詰めているも同然だ。

 やるべきことは果たした。それに、あの日先輩に言われた言葉も正しいと思う。

『俺たちは、まだたくさんの人を救わなきゃいけない。一人ひとりに関わりすぎると、体も心も持たなくなるぞ』

 もちろん、人命第一であるべきだし、適材適所という言葉の通り、避難後のことは後方支援隊や避難所のカウンセラーに任せるべきであるということは、頭では理解できる。

 しかし、心が納得しない。
 自分は、救うべきものを救いたい。

 そういう意味では、昨夜の〝うさまる〟のお墓は、時間外にしたこととはいえ、間違っていなかったと思う。
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