人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
【緊急地震速報】

 表示された文字を見た瞬間に、スマホから音声がながれる。

『地震がきます。強い揺れに備えてください』

 音声とともに、地面がぐらぐらと揺れだした。手桶や柄杓が音を立てて揺れ、こちらに倒れてきそうだ。

「芽郁さん、こちらに」

 勇朔さんはとっさに私の腕を掴む。そのまま腕を引かれ、水汲み場の外へ。
 しかしその瞬間、〝うさまる〟のプレートが音を立てて下に落ちた。どうやらきちんと鞄に入っていなかったらしい。

 はっと振り返り、手を伸ばす。しかしその瞬間、大地がどん、とひときわ大きく縦に揺れた。
 私はその場に尻もちをついてしまう。大きな墓石が空中に浮くのが見えた。勇朔さんの手は、私の腕から離れてしまった。

「芽郁さん!」

 勇朔さんの声とほぼ同時に、バキッという音がして、水汲み場の屋根が真上から降ってくる。

 逃げられない!

 私は動けずに、衝撃に備えてぎゅっと目をつむった。
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