人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 勇朔さんが、私を守ってくれる。
 でも、そのせいで勇朔さんが大変なのが辛い。
 揺れで余計に大変なはずなのに、勇朔さんが優しい言葉をかけてくれるのが、痛い。

 だけど、何を言っても彼は優しい言葉を私にかけてくれるだろう。だから、私は黙るしかない。

「わざわざ逃げ出した男に守られるなんて、嫌でしたね」

 複雑な感情を隠していたら、むすっとした顔になってしまったらしい。勇朔さんは自嘲するように笑った。

 違う、そうじゃない。
 だけど私は何も言えずに、押し黙る。口をぎゅっと結ぶと、目頭が熱くなった。

 でも、今は泣いている場合じゃない。ぐっと奥歯を噛み締めて、涙を必死にこらえる。そんな妙な沈黙がしばらく流れた、そのとき。
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