人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「立ち上がることはできますか?」

 私を引っ張り出してくれた隊員に訊かれ、「はい」と答えた。
 それから、彼は止まっていた災害救助車の座席から毛布を取り出し、私の肩にかけてくれた。

「低体温もなし、顔色もいい。大丈夫そうですね」

「はい、ありがとうございました」

 私は彼に頭を下げ、救助車の縁に座らせてもらった。
 するとそのとき、勇朔さんの方が急に騒がしくなった。

 彼の姿はまだ見えない。何かあったのだろうか。

 私はいてもたってもいられず、毛布を引きずりながら、そちらへ向かった。

「勇朔、さん……?」

 彼の名をつぶやき、そこにある彼の姿を見て、私は息をのんだ。頭から血の気が引いてゆく。

 勇朔さんはぐったりとしたまま、目を閉じていた。
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