人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「途中で態勢を変えたりしましたか? たとえば、なにかに挟まるような」

 私はしばらく考える。
 だけど、心臓の嫌な音が邪魔をして、うまく思考が働かない。ばくばくという嫌な鼓動を抑え込むように、私は必死に息をした。

「ゆっくりで大丈夫です。まずは息を吸って、吐いて」

 促され、そのとおりにする。するとすぐ、思い出した。

「消防に通報する直前、足を曲げたいと言って膝をついてました」

 すると、救助隊員はわずかに目を見開く。

「わかりました、ありがとう」

 私にそう言って、彼はすぐに救助車へ走っていく。車から何本かのペットボトルを取り出すと抱え、こちらに走って戻ってきた。

「あの!」

 私は思わず声をかけた。救助隊員が振り向く。

「勇朔さんは、助かりますよね……?」
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