人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「クラッシュ症候群、ご存じですか?」

 私があまりにもぼろぼろと泣くからか、救助隊員は私にそう声をかけてくれた。首を横に振ると、彼は「説明しますね」と口を開いた。

「体の一部が長時間圧迫された状態になると、圧迫された箇所に毒素が発生し溜まります。それが、クラッシュ症候群という状態です。そのことに気づかず圧迫を解くと、血流に乗って毒素が一気に全身に回ってしまうんです」

「だから、瓦礫の撤去を止めたんですか?」

 彼は「はい」と頷く。

「救急車を呼びました。今はとにかく水分を摂れるだけ摂ってもらって、毒素を薄めています。そのあと、すぐに透析ができる病院に運ぶことができれば――」

 そこまで言いかけて、救助隊員は毛布から出ていた私の左胸のあたりを見て、目を見張った。

「彼、自衛隊の方なのですか?」
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